Column

寝食足りて。

2025.06.04

フリーライターになったばかりの頃、とても権威のある方にお会いして取材をさせていただく機会があった。自分はライティングの初心者だとわかっていたけど、「ここは勇気を出そう」とアポを取った。

あれから5年ほど経って、私のライティングスキルは多少はアップしているだろうけど、今、あのときお会いした方に取材できるとなったらどうするだろう。

「とても私では分不相応です」などという、体のいい言い方で断るかもしれない。

あのときの私は、未熟でもなんでも「やるしかないステップ」にいたと思っている。

なんでもいいから経験を積まないと、という感じで。

あれがいい、こうしたい、という「自分の考え」は後回しにして、まずはやってみなくてはいけないときがある。

だけど、「私、なんでもやりますんで」「まずはやらせてくださいよ」という新人ばかりではないことも知っている。

「周りの人に話し声を聞かれたくないので、アポ取りの電話をしたくない」

営業部の新入社員にそう言われたあのとき、どうすればよかったのだろう。たまに考える。

採用段階でミスマッチがあったような気はしなくもないけど、少なくとも本人は「営業職はアポ取りをする」と入社前から知っていただろうし、その上で自分で入社を選択した。

学部で専門分野を学んでいるけど、他のことがしたい。

他のことをしてみたけど、どうも自分に合っていないみたい。

やっぱり学校で勉強したことを活かしてみたい。

人生は自分のものだから、好きなように選択していいと思う。

今は比較的、自分の希望に近い仕事を選びやすいわけだから、嫌な思いをして働かなくてもいい。

要は、5年後、10年後、20年後に、寝食足りて、笑って暮らしていけるかどうか。

そのために踏ん張らなくちゃいけないときが、どこかであるってことなんだと思う。

6月。

新入社員の皆さん、いかがお過ごしですか?

きっと踏ん張っていることでしょう。

今の経験は必ず、おじさん、おばさんになったときの栄養になっていますよ。

Writer

齋藤 悦子

1980年生まれ。就職氷河期に社会人デビュー。26歳から13年間採用支援業界に身を置く。ひょんなことからフリーライターの道へ。ラジオとエッセイとレモンサワーが好き、スノーボードとたまにテニス、ドラム特訓中。

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